昭和3年(16陽会)1928年

NO6

〈朝日新聞〉
昭和3年8月8日(水)甲子園 開始午前9時10分 閉戰11時15分
球審・加藤、壘審・松田、竹村
▽準決勝
 姫路師範 000 000 000=0
 神戸二中 200 020 40X=8


 〔姫路師〕 打安犠三四盗刺補失残
       數打打振死壘殺殺策壘
 中 鹿 谷 3100103000
 二 廣 岡 4200000102
 一 福 井 3100108222
 捕 安 福 4001007210
 遊 渡 邊 4000002220
 左 大 西 2000101000
 投 舟 津 3000000200
 右 苧 玉 3000002000
 三 邑 橋 0010010000
      計 294023024954

 〔二 中〕 打安犠三四盗刺補失残
       數打打振死壘殺殺策壘
 左 太 田 3200202000
 中 山 本 4210002000
 三 丸 山 3110010200
 一 田 中 41020013200
 投 大 橋 2010102401
 遊 池 田 4000001702
 捕 前 田 3200103002
 左 志 摩 3011001000
 二 牧 野 4002003201
     計 3084541271706

☆缺陥暴露したバッテリー主義☆
〔第一回〕姫師=三者凡打。▽二中=太田劈頭死球で出壘、山本の犠打に送られ丸山遊匍失二盗で早くもピンチを掴み、丸山三振後大橋また死球で滿壘、池田遊撃に緩ゴロを呈し野選となり一點を先取、前川また四球で押し出し、舟津の肩の定まらぬに乗じ二點を奪ふ。

〔第二回〕姫師=大橋に牛耳られて當らず。▽二中=もまた牧野遊匍一失に出たのみ。
〔第三回〕兩軍三者凡打。

〔第四回〕姫師=鹿谷三壘頭上を抜く安打に出たが、廣岡の三匍に封殺され、堀井二飛、廣岡投手牽制球にかゝってアウト。▽二中=前田右前安打、志摩投前バントに送ったが前田一擧三壘に走って刺され牧野三振。

〔第五回〕姫師=やうやく大橋の球を當て出したが二者外野に打ち上げ大西四球を得たが舟津の邪飛投手よく走って捕へ無為。▽二中=投前に絶好のセーフティーバントを呈し投手送球を一壘後逸して二進、山本の中前安打で太田生還、丸山中堅犠飛に走者を送り田中三振落球に山本また還り二點を加へ完全に敵を圧す。

〔第六回〕姫師=あせり大橋の外角に流れるスローボールに手を出し凡飛ばかり上げる▽二中=三者凡退。

〔第七回〕姫師=ラッキーセブンを迎え廣岡、堀井ともによくボールを選り、ストレートを待って二遊間を襲ひ出で好機來たと見えたが堀井インフィールドフライ、渡邊あせってストライクを見逃し投匍となり大西また投匍で空し。▽二中=姫師舟津投手スピード著しく落ち、二中牧野の死後太田四球、山本、丸山、田中ともに單打し、大橋の中犠飛、池田遊匍失、前田の遊匍側安打などで四點を加へる。

〔第八回〕姫師=相變らず大橋投手の緩いカーブに手を出して凡退。▽二中=無為。
〔第九回〕姫師=せめて一點をでも挽回せんと頑張ったが鹿谷の死後廣岡二遊安打、堀井四球あったのみで遂に得點なく八A對零で敗る。

《武 陽》
◎優勝戰 本校對甲陽中學

我等が一歳の間、あらゆる苦痛と戰ひて、只管に技の練磨、精神の鍛錬に務めしは、たゞこの日、この優勝戰の日を望みしにありしなり。
朝來曇天にして、雨を思はせし空模様も優勝戰に入りてより、先づ雲間を破りて八月の陽光洩れ出づれば、やがて積雲も退散し、氣持ちも晴々とする絶好の野球日和となりぬ。やがて正十時、試合開始のサイレン高らかに響き渡るや、大鐵傘を動かす急霰の如き拍手に送られて、我軍は勇躍守備に就けり。

第一回。(甲陽)「プレーボール」水木主審は高く試合開始を宣告し、我軍の先づ迎へしは、敵軍中の強打者村上なり。彼昨日の對神港戰に二本の三壘打を放ちて意氣昂然たるものあり、悠然としてプレイトに立つ、先づ第一球を投ずれば、ボール……低く強くアンパイアの聲あり。續いて第二球、ニアコーナーを通す低目のストレートのいゝ球。大橋投手は後半を慮りて曲球を投げず。

ストライク今度は高く強く。カウントはワン・エンド・ワン打者は強打者、彼は強打者の通例として稍々高目の球を好む者、此の際當に低目の球を投ずべきにはあらざりしか、あゝ不幸大橋は彼が最も好む處のボールを投ぜしなり、突如響バットの音。見よボール大きく左翼手太田の頭上を抜きぬ。太田球を手にせるとき村上は二壘を經て三壘に向かはんとす、池田遊撃手、太田よりのリレーを三壘へ投ぜしも、雨水に濡れたりしため辷りて、あらぬ方向に轉々とする間に、先づ最初の一點を與へぬ。

次打者木村打ちたるボールは貧弱なりしも難球となりて一二間安打となりしが、續く鹽見の遊匍に二壘にてフォースアウト。三上匍球を三壘手丸山自重し過ぎて一壘へ悪投して生かし、藤尾の三打ゴロを丸山焦って又もハンブルして滿壘のピンチは到りぬ。布谷投匍に木村を本壘に刺せしが、續く川村中前へ直球安打を呈し、二者生還、吉田の二飛に漸く終り、代りて

(神二中)奮起して、先づトップバッター太田ワンストライキノーボールの時、好球を打って遊飛安打と見えたが、川村遊撃手よくバックして捕へらる。山本猛打者二壘へ強ゴロを呈せば壘手焦って一壘へ悪投し、一擧三壘に達せり。丸山續いて一撃すれば遊撃深く強ゴロを放ち、山本本壘を突き斷然セーフと思ひたりしに審判アウトを宣告す。

あゝ此の一點の得喪當に我軍の勝敗を決するもの、有能なるアンパイアなりせばとナイン悲痛なる思ひに滿たさる。
四番田中ボックスに入れば萬雷の如き大拍手起る。一撃すればショートの頭上をライナーで抜きて四番打者の貫録を示し、大橋四球に滿壘の好機到りしが、池田惜しくも二匍して入らず、三走者悲憤の涙を呑んで壘を去る。

第二回。(甲陽中)ラストバッター小室ツースリーのラストボール迄ネバリシ後ファーハイのボールを引掛けて左越二壘打となりぬ。此の時左翼手太田ジャッジ悪く、易い球を、難球とせしは遺憾の極みなり村上三匍失に出づ。我が三壘手丸山の顔面全く蒼白となり、見るもあはれなる程なり。木村の犠打に二走者二三壘に據りて、我軍ピンチに見舞はれしが、大橋奮闘して鹽見を遊飛に、三上を三振に打取りて危機を脱す。
(神二中)前田ファウルフライを捕手に得られ、志摩のバント三壘手の強肩に空しく、牧野ゴロに凡退。

第三回。(甲陽)三者凡打し、大投手大橋の快腕冴ゆ。
(神二中)我軍總攻撃に移り、二死後丸山遊越安打に出で田中デッドボールを喰ひて壘を得、大橋の遊越テキサスに一擧生還、尚ほ左翼の返球を投手二壘走者を刺さんとして暴投、二走者生還して計三點を擧ぐ。

第四回。神二中獨特の戰闘的精神は表はれて來ぬ。前回の得點に勇躍せる吾軍は守備に於いて牢固たるけと鐵桶の如く、冴えを増せる大橋投手に奔弄されて敵は再び三者三退。
(神二中)前田一−三後強引の二匍強襲安打に出しが、後續振はず、志摩三振後、九番牧野の遊匍に重殺を喫す。

第五回。(甲陽)木村遊匍を池田失して生かし、三番鹽見三振後、三上の三匍に二壘で封殺、一壘にありし三上、大橋の好妙なる牽制球に斃る。
(神二中)太田中堅フライ、山本イリガリーバッデドボールに斃れ丸山三振す。

第六回。兩軍投手好投して入らず。出壘する走者なし。回を追うてすでに六回、此の間我軍は斷然敵を抑へ、屡々フェアプレーを行ふ。

第七回。(甲陽)吉田左前安打せしも、小室は反則打球に死し、村上の投匍で吉田を二壘にフォースアウトし、村上二盗を企てたるも捕手前田の好投に刺さる。大橋の壓倒的好投、ナインの鐵壁の守備、見よ我軍の力をファイティングスピリットの偉大さを。

(神二中)前田無死にしてワンボール後外角のアウドロを痛快にひっかけ、右翼越の大三壘打を放ち尚ほボールは返球されたる後も投手プレートより一間許りの處を轉々とし、壘手は皆三壘と二壘とに集りて本壘は空となり、本壘を突くこと容易なりしを、前田は次の壘を窺ふことを忘れて壘上に佇立し、コーチャーはボールの存在を見ず、遂に本壘を陷入れざりしは實に實に遺憾の極みなりき。

續く甲斐(ピンチヒッター)打氣に出でしがおぞくも三振を喫し、ラストバッター牧野一ストライクの後にベンチよりスクヰズのサインは出で、ピッチャーがモーションを起こすや、三壘ランナーはホームへ向って走り出したり!!

牧野はバントの姿勢を取りてあり、斷然スクヰズは成功すと思ひしに、如何にしけん牧野は姿勢を崩してバントをやめしなり。ああゝ!!ランナー前田は當然三本間に挟まれやがてホームに悲惨なる最後を遂げぬ。すでに二死、牧野は三振に終りる。

第八回。(甲陽)二、三、四番木村、鹽見、三上と續いて三振。
(神二中)太田三振後山本三匍失に出でしが丸山中前に痛烈なる直球を呈して中堅手の好走好捕に二死となりし後盗壘を企てゝ成らず。

第九回。回を重ねる事八回固ゝに最後の回を迎へぬ。(甲陽)藤尾レフトの前へ直球を呈して出で翼手の後逸に二壘に達せしが離壘し過ぎたるため前田捕手の好投池田遊撃手の好觸に刺さる。布谷右飛。川村遊匍。

(神二中)我軍ラストインニングに入りて總攻撃を開始す。先づ我軍の重量打者田中、一撃すれば遊撃左を抜くライナーヒット。續いて二盗せしが、次打者大橋の中前安打に、判斷を誤って進壘せず。池田の遊匍に大橋二壘にてフォースアウトせられしが池田盗壘して一死走者二三壘に據る。前田ボックスに入るや七回に於けるが如き、好打を期待せられたるも三振に終り、

息塞るが如き緊張裡に甲斐ボックスに入る。ラストインニングのラストバッター正に我軍の運命はこの一撃にかゝりしなり、されど捕手の落球する間に本壘を衝きて憤死す。かくて幾度かチャンスを得て幾度か之を失ひ、遂に最終回にも得點を得ず。補回戰に入る。

第十回。(甲陽)吉田三遊間安打に出で、小室の犠打に送られ、村上の遊匍を主将池田魔につかれたるが如く後逸し、吉田三進す。村上二盗す。木村の二匍に吉田還り、鹽見右飛す。
(神二中)甲斐捕前匍球捕失に出壘せし後二盗し、牧野三振、太田第一球をレフトフライし、山本一匍に萬事休す矣。

▽決勝戰
 甲陽中學 300 000 000 1=4
 神戸二中 003 000 000 0=3

 (延長10回)

 〔甲陽中〕 打得安二三本犠三盗四刺補残失
       數點打打打打打振壘死殺殺壘策
 8 村 上 51101000102020
 2 木 村 410000110012001
 1 鹽 見 50000002000401
 7 三 上 41100002100000
 9 藤 尾 40000000002003
 4 布 谷 40100000002310
 6 川 村 40200000002410
 5 吉 田 41100000000200
 2 小 室 301100110010210
   合 計 37471102620301555

 〔神二中〕 打得安二三本犠三盗四刺補残失
       數點打打打打打振壘死殺殺壘策
 7 太 田 50000001101001
 8 山 本 50000000001000
 5 丸 山 41100001000112
 3 田 中 31200001119012
 1 大 橋 31200000011610
 6 池 田 40000000105312
 2 前 田 40101001009300
 9 志 摩 10000000001000
 PH 甲 斐 30000002001010
 4 牧 野 40000002002100
   合 計 36360100832301457

嗚呼、吾軍敗る!!!
若冠甲陽に名を成さしめて、榮光の輝く大優勝旗を譲りたり矣!!!
我軍のナイン、ベンチ前に並びて、萬斛の涙を呑みつゝ、優勝旗の授與を受くる甲陽軍のために拍手を送る。
ナインの心情を思ひて涙あれ。
嗟呼。吾軍敗る!!!

應援歌淋しく耳朶に残りたり。
 怨をのんで、地にひそむ、
  この斷腸の一歳を、
 今勝たずんば、何日の日か、
  いかで覇權を握るべき。

フレイ二中、フレイ二中、  フレー、フレー、フレー。
あゝその應援歌も今に空しく、古紫の大旆は吾が手にあらず覇權を握るべきその手には、紅涙徒らに流れて敗将の悲哀は盡きず。

されど、全試合一貫せる男らしき正義の健闘、堂々全回を通じて斷然たる壓迫、以て意を安んずべき哉。勝敗は兵家の常、又己みなんかな烈日膚を刺す甲子園頭に、八月の花と散りて、今し去り行く武陽ナインよ。
 正しくば、敗れてしこそ、男々しけれ
    これぞをのこの、心なるらぬ。

應援團諸君。校友諸兄よ、許せ。
厚き期待に背きて、吾軍は一敗地に塗れぬ。これも、将た命なる哉。
唯吾軍はその萬全を盡して、天運を待てりしに、天は吾に幸ひせず。
いたづらに敗残の苦痛を嘗む。胸は迫り、氣は打たれて、吾すでに言ふ處を知らず。
嗚呼。

〈朝日新聞〉
昭和3年8月9日(木)甲子園 開戰午前10時 閉戰1時25分
審判・水木(球)馬道、西川(壘)
▽決勝戰
 甲陽中學 300 000 000 1=4
 神戸二中 003 000 000 0=3

 (延長10回)

 〔甲陽中〕 打安犠三四盗刺補失残
       數打打振死壘殺殺策壘
 中 村 上 5100012002
 捕 木 村 41110012010
 投 鹽 見 5002000410
 左 三 上 4002010000
 右 藤 尾 4100002000
 二 布 谷 4000002331
 遊 川 村 4100002401
 三 吉 田 4200000200
 一 小 室 31110010201
     計 3772602301555

 〔神二中〕 打安犠三四盗刺補失残
       數打打振死壘殺殺策壘
 左 太 田 5001011010
 中 山 本 5000001000
 三 丸 山 4101000121
 一 田 中 3201119021
 投 大 橋 3200101601
 遊 池 田 4000015321
 捕 前 田 4101009300
 右 志 摩 1000001000
 右 甲 斐 3002001001
 二 牧 野 4002002100
     計 3660823301475

 ▲重殺=三村−布谷−小室(甲陽) ▲三壘打=村上、藤尾(甲陽)前田(二中)
 ▲二壘打=小室(甲陽) ▲ベンチコーチャー天知氏(甲陽)渡邊氏(二中)

〔戰評〕甲陽第一回村上劈頭左越の三壘打し遊撃手よりの送球を三壘に悪投して村上一擧生還、木村二遊間安打、鹽見の遊匍に送られ三上三匍失に木村三進、藤尾三壘失に滿壘となる。

 このとき布谷、投前にバントし木村本壘に刺されたが川村の二遊間安打に二點を加へ計三點を占めたがその後二中大橋投手の腕の冴えに點を加へず苦戰したが補回戰に入って第十回吉田三側安打、小室の犠打に進み村上の遊匍失に三進、村上二盗、木村二匍に吉田生還し貴重な一點を入れ総數四點を得たに對し、二中は一回に一死滿壘のチャンスを迎えたが入らず第三回二死後丸山遊越安打、田中死球、大橋左側安打に丸山還り左翼からの返送を投手走者を二壘に刺さんとして悪投し田中生還、大橋もまたホームを陥し入れ三點を得て同點となり第七回には無死で藤尾右越三壘打したが入らず

 第九回には田中、大橋ともに安打し走者三、二壘によったが甲陽よく守って點をなさしめずついに甲陽の優勝するところとなった。

〈試合經過〉
〔第一回〕甲陽 村上1−1の後少し高目のストレートを左翼深く戞飛ばして三壘打し、左翼の送球を遊撃、三壘に暴投し一擧生還、木村また二遊間安打、鹽見遊匍で斃れたが三上三匍一失、藤尾また三匍失に滿壘、布谷バント成らなかったが、川村の二遊間安打で二點を収め吉田二匍したが甲陽三點をあげ最初から意氣揚る。

▽二中 太田遊匍、山本二匍一壘悪投で一擧三進、丸山の遊匍に山本惜しくも本壘に刺され、田中遊越安打、大橋四球で滿壘となり二中元氣に攻め立てたが池田二匍して空しく。(甲陽三、二中零)

〔第二回〕甲陽 小室左越二壘打、村上三匍失、木村の犠打にまたまた好機を掴んだが二中よく防いで無為。
▽二中 三者凡打。(兩軍零)

〔第三回〕甲陽 三者出壘せず。
▽二中 一死後丸山遊越安打、田中死球、この時大橋遊撃テキサスを放ち丸山勇躍して還り、左翼の返球を投手二壘走者を刺さんとし悪投し田中、大橋二者踵を接してホームインし、こゝに兩軍同點となる、池田右飛。(甲陽零、二中三)

〔第四回〕二中 三點を入れてすっかり氣をよくし元氣頓に横溢、大橋の球にスピード加はり甲陽三者凡退。
▽二中 藤尾二匍を過らせて出壘したがピッチヒッター甲斐三振を喫し牧野の遊匍にダブルプレー。(兩軍零)

〔第五回〕甲陽 木村遊匍一失に出たが後援續かず、木村また投手牽制球にかかゝって斃る。
▽二中 も三者凡退。(兩軍零)

〔第六回〕兩軍いよいよ守りを堅くして入らず、すべて凡退。(兩軍零)

〔第七回〕甲陽 吉田遊越安打したが小室イリガリーバッテッドボールに死し、村上投匍で吉田を二壘に殺し、村上二盗を企て捕手の好投に刺され二中よく守る。▽二中 前田一ボールの後外角のアウドロを痛快に引かけ右翼三壘打を飛ばし會場緊張しこゝに一點を収めるかと想はれたが、甲斐三振、牧野スクヰズを失し藤尾むざむざ本、三間に刺され機を逸す。牧野三振。(兩軍零)

〔第八回〕兩軍三對三のまゝ試合は白熱、火花を散らす、兩軍好守して入れしめず、二中大橋投手のコントロールますますよし、兩軍無為。(兩軍零)

〔第九回〕甲陽 藤尾の左前安打を左翼後逸二進し、甲陽にチャンス來を想はせたが走者離壘し過ぎて惜しくも刺され後續凡打。

▽二中 田中二遊間安打二盗、大橋中前安打で二中に好轉の曙光見えスタンドの拍手鳴り止まず池田遊匍に大橋を二壘に封殺したが丸山三進し本壘を虎視す、二中一點をせしめんとし甲陽この最大の危機を脱せんと奮闘し試合は息詰まるばかりである。
田中ストライキを見逃し過ぎて三振を喫し、甲斐1−1の時、三壘走者田中捕逸に本壘に突進したが、捕手よくタッチしてピンチを逃れいよいよ補回戰に入る。(兩軍零)

〔第十回〕甲陽 吉田三側安打し小室投前犠打して送り、村上遊匍失に吉田三進、村上二盗、甲陽こゝに好機を迎へ木村の二匍に吉田堂々本壘に還り貴重の一點をあぐ、鹽見左飛。
▽二中 甲斐捕前匍球捕失に生きたが牧野三振、太田右飛、山本一匍に點を加へ得ず遂にこの大試合も四對三で甲陽の優勝するところとなった。