昭和4年(17陽会)1929年

NO8

☆補回戰十一回に及ぶ 遂に神戸二中勝つ
 劈頭戰を飾る意氣高らかな大接戦 5−4 新進生野中惜敗☆

第一回。生野は永田を二中は津久井をマウンドに双方緩曲球に味な球捌きを見せる。先攻の二中は牧野二匍、津久井四球を利して出ると別所二−三後好球を見逃さず三壘左を抜く安打したが中山左翼フライして津久井を二壘に併殺されて無く◇生野も原田左翼フライ、石橋遊ゴロ、高野よく掴み永田二匍して双方波瀾に富んだ前哨戦を終る。

第二回。二中、前田投匍、甲斐二飛、志摩右飛に無為。
生野山田中飛、高塚二飛、越田の三匍に凡退。

第三回に入って二中高野四球に出て野田三振、牧野投匍して高野を送る、牧野三振に牛耳られてチャンス育たず。
◇生野、清水中堅フライ、岩崎遊匍、松尾三壘フライに得點の機なし。

第四回。零對零全く伯仲した熱戦を續けて四回に入る。二中、別所ストレートの四球に出て丸山の三壘ゴロに別所封殺されたが一壘低投に丸山二進、前田の二匍に出進したが甲斐遊撃にフライをあげて空し。
◇生野は原田の三前フライ捕手と譲り合って安打となる。石橋三振、永田中堅フライ、原田二壘を衝いて刺され双方依然得點なく後半戦に入る。

第五回。息詰る様な白熱戦の五回に入り二中、志摩中堅フライ、高野、野田三振。生野の永田投手の腕愈々冴えてくる。◇生野は山田三壘ゴロ、高塚左翼テキサスを放って出たが越田三振、清水遊撃フライ、二中の津久井新投手味を見せる。

第六回に入って俄然戰機熟して二中牧野二壘打して津久井の投前ゴロを投手牧野を封殺せんとして高投一擧三壘を得られ津久井スティールを捕手又高投して牧野生還。二中一點を先取。別所のバントに津久井三進、丸山の二越安打に津久井勇躍生還、前田四球、丸山追ひ出され二、三壘に挟殺、甲斐の三振に止んだが二中二點を得て武陽軍意氣高し。
◇生野は岩崎投匍したが松尾一−零後二壘左を抜く痛烈な二壘打を戞ツ飛ばして原田の投前ゴロ一壘低投して松尾生還、原田一擧三壘を得たが石橋の三匍に本壘に憤死、永田捕邪飛したが生野一點を奪回す。

第七回。ラッキーセブンに入るや二中志摩中堅フライ、清水スタート悪く二壘打となる。高野のバント志摩動かず、野田三振、牧野一壘線に沿ふ軟ゴロ一壘高塚滑って生かす、津久井左飛して二中好機を逸す。
◇生野、山田よく選んで四球に出る、高塚中飛、山田スティールしたが清水二壘へ直球を送ってなし。

第八回。二中、別所右中間を破る三壘打、續く丸山の左越三壘打に別所を迎え前田遊撃を抜いて丸山生還、甲斐の三匍高投して走者二、三壘に依ったが志摩一壘ゴロして前田本壘寸前に刺され甲斐投手牽制球に殺され志摩も又投手の牽制になかったが二中更に二點を加える。
◇生野、二死後原田、石橋四球に續き永田の二匍失に滿壘となり山田又四球を得て原田押し出しの一點をあげたが高塚の三匍に石橋を封殺。生野一點を奪取する。

第九回。二中、林二飛し牧野右前安打せしが津久井の投匍に倒れ別所の中飛にやむ。
◇生野、最後の攻撃に入って越田二飛、一死後清水遊越の安打、岩崎ストレートの四球、(二中津久井一壘へ、前田投手に、高野二壘へ)捕逸に走者二三壘による、松尾も四球に出て滿壘、原田又も四球に清水押し出されて還る。石橋スクヰーズ成って島崎生還、同點となる。(二中の陣容元通りとなって津久井プレートに立つ)永田の投手ゴロに松尾本壘に原田三壘に重殺して◇生野、本壘に原田、三壘に重殺して生野二點を奪取し補回戦に入る。

第十回。二中、丸山投匍、前田一壘ファウルフライ、甲斐三匍。
◇生野は(二中甲斐投手となって津久井右翼へ)山田一−二後左前に安打、捕逸に一擧三進、高塚三振、一死後越田とのスクヰーズ破れて山田本壘に惜くも刺され越田二匍して生野チャンス空し。

第十一回 に入る。二中、野田一−三後遊三間を抜く安打に高野三振したが野田すかさずスティール、林三振、二死後牧野二遊間を抜く安打に野田生還、津久井遊飛に止んだが二中一點を加へ
◇生野は清水遊撃フライ、岩崎三振で二死後松尾二−三後三遊間を破る安打、原田三振して結局五對四新興の生野を敗る。(閉戦二時三十五分)

《武 陽》
◎對松山商業戦 
昭和4年10月2日(水)濱の宮球場
 二十九日は終に雨に!二日?曇り勝ちの秋空は絶好の野球日和に恵まれ神宮遷御の日に期し相手松山は昨秋、大會の覇者で懐しの鳴尾原頭に黄金時代を迎へた當時を忍ばしめ海を越え四國に雄たり、双方火と散るアンチセオリのスピードを有つゲームの進展に衿持高き歴史に精神せん。松山先攻で球審金政、壘審小柴、高田の三氏に午前九時三十分プレーボール。

 松山商業 400 001 121=9
 神戸二中 000 000 000=0


〈神戸新聞〉
[神戸新聞主催第5回全國選抜中等野球大會]

 昭和4年10月2日(水)濱の宮球場

  (敵失) 001 001 210=5
  (四球) 100 002 013=7
  (安打) 421 101 111=12
 松山商業 400 001 121=9
 神戸二中 000 000 000=0

  (安打) 001 000 120=4
  (四球) 121 101 000=6
  (敵失) 000 010 011=3

 〔松 商〕 打得安犠盗三四刺補失残
       數點打打壘振球殺殺策壘
 7 尾茂田 32101132002
 6 高 須 61100105300
 9 藤 堂 51201000002
 4 矢 野 50000003400
 3 阿 部 31112015010
 8 寺 田 42201012001
 5 麻 生 40100014012
 2 岡 本 52300006212
 1 山 下 40101210301
       3991216472712310

 〔二 中〕 打得安犠盗三四刺補失残
       數點打打壘振死殺殺策壘
 6 牧 野 30000112400
 7 石 原 40000002001
 2 別 所 40100105121
 5 丸 山 10000136201
 4 前 田 40000103221
 8 志 摩 40101004011
 3 津久井 30000114002
 9 野 田 40100001001
 1 甲 斐 20100010001
       2904015627959

 △開始=九時三十分 △終了=十一時三十分 △審判=金政(球)小柴、高田(壘)
 △三壘打=岡本 △二壘打=高須 △逸球=岡本、別所 △併殺=(山下−高須−矢 
  野−阿部)(矢野−高須−阿部)

☆9−0 松山商業大勝す 力戰つひにチャンス逸した 神戸二中のナイン☆
◇…一回、先攻の松山は尾茂田四球に高須一−○後左中間の痛烈な二壘打して藤堂第一球を遊撃を抜く安打に尾茂田生還、矢野二壘フライ、阿部中堅犠飛に高須又還り、寺田中前に安打して藤堂をむかへ、麻生の中飛、中堅手懸命に追ひかけたが後逸して寺田二壘から一擧生還、岡本の中飛に止んだが松山四點を先取する。
二中は牧野四球に出てパスボールに二進、石原左翼フライ、別所二壘フライ、牧野三壘へ猪突して刺さる。

◇…二回、松山は山下二匍、尾茂田遊撃の右を破る安打して高須の遊匍に二進、藤堂三壘右を抜く安打してスティールなり走者二、三壘、矢野の三壘直球に得點なく。二中は丸山二−三後よく撰んで四球を利したが前田遊飛、志摩の遊ゴロに丸山封殺される。志摩二盗なり津久井四球に出たが志摩の三壘スティール惜しいところで刺される。

◇…三回、松山は阿部遊撃頭上を抜く安打してスティールなり、寺田二−三後二匍失に出でスティール、麻生左翼フライ、岡本二壘ゴロに走者追ひ出され本三壘間に阿部を二、三壘間に寺田を挟殺して二中危地を脱す。
二中は野田右前に安打、甲斐四球に出たが牧野バント失して三振、石原の二匍に走者二、三壘、別所三振して二中チャンスを逸する。

◇…四回、松山は山下二−三後遊三間を抜く安打したが尾茂田三振、高須三邪飛、藤堂の遊ゴロに山下封殺されてなく。
二中は丸山四球に出たが前田三振後志摩の二壘ゴロに封殺、津久井の三直に二中四點を背負ふて後半戦に入る。

◇…五回、松山は矢野遊ゴロ、阿部三振、寺田二壘にフライ。
二中は野田三振不死に出たが甲斐の投手ゴロにダブられ牧野捕前にゴロになし。

◇…六回、松山は麻生三匍、岡本の左前安打して捕逸に一擧三壘に達し山下四球に出てスティールなり尾茂田四球に滿壘となり高須二壘フライ、二死後投手の牽制球に走者を追ひ出したが捕手三壘へ高投して岡本を還し藤堂の捕邪飛に止んだが松山更に一點を加へる。
二中は石原遊飛、別所の左翼痛烈な當りを尾茂田よく掴んでファンを唸らす、丸山四球に出たが前田中堅フライして二中意氣揚らず。

◇…ラッキーセブンに入る。松山は矢野三壘フライ、阿部右飛、二死後寺田中前に安打して二盗に捕手高投してカバーした中堅手も後逸して長驅生還、松山又一點を加へる。
二中は志摩一壘線に沿ふゴロして出たが津久井三振、野田の二匍に重殺を喫する。

◇…八回、松山は岡本○−二後左翼頭上を抜く三壘打して山下三振、尾茂田四球に出て二盗、高須三振、一死後藤堂の二匍低投に岡本、尾茂田生還、松山二點を加へ大勢を決する。
二中は甲斐右前テキサスに出たが牧野三飛、一死後石原一壘ゴロ失に別所の遊撃強襲安打に甲斐本壘を衝いて刺され丸山三振して機會育たず。

◇…九回、松山は阿部、寺田共に四球に出でスティール、麻生死球に岡本は中前テキサスを放って阿部生還、山下三振、尾茂田三壘ファウルフライ、高須中飛に止み。二中、前田投手ゴロ、志摩中飛、二死後津久井三匍失に出たが野田投手ゴロに、二中健闘したが結局九對零で松山凱歌をあげる。(終了十一時三十分)

18陽会(昭和5年卒)
 丸山 昌雄    三塁
 藤戸 秀男    
 別所 忠雄    右翼
 中山 浩輔    中堅
 石原 寿夫    二塁