昭和4年(17陽会)1929年

NO3

◎對平安中學戰 昭和4年6月14日(金)
 對甲陽戰に豫想外の悪戰をなし練習に猛練習を重ね胸に感ずる所あり、前戰にたゆまざる純眞その者の如き若人の意氣!今後如何に展開なし行くであらう。
球審、小柴氏、壘審、黒田氏。開始二時二十二分。

第一回。(二中先攻)牧野先づ三匍失に出でしが投手牽制に掛る、志摩○−一後快打すれば左上本壘打となり一點を先取す、別所三振、丸山一匍。
(平安)香椎遊匍、稻田一−一後遊撃を抜くかと見えしライナーせしも牧野好捕し伊藤中前安打、武田三失に生き津久井の逸球に伊藤本壘をつき刺殺さる。

第二回。(二中)前田三振、津久井三匍し内海一壘手の逸球に生きしも又伊藤の老巧なるモーションに掛り殺され、山田の二匍に止む。
(平安)伊藤弟遊撃飛球、中川三匍、岡村二匍失後盗壘し内海四球、和田の左翼飛球に終る。

第三回。(二中)甲斐三振、中山二匍、牧野三振に凡退。
(平安)香椎二匍、稻田遊匍失に生き盗壘し伊藤再び遊匍失に生き武田の左翼左方二壘打に稻田還り、伊藤三壘に止る、伊藤弟の時甲斐投手津久井一壘手に代り別所一壘、山田中堅、甲斐右翼守備となる、伊藤三壘邪飛、中川の三失に伊藤生還一點リードす。中川盗壘せしも岡村一壘邪飛に終る。

第四回。(二中)志摩三振、別所二匍、丸山一壘右方を抜き安打せしも前田の三匍に成らず。
(平安)内海左翼飛球を志摩エラーし二壘を得和田左飛、香椎四球、稻田左翼飛に内海三壘を得伊藤中前安打し生還、得點を重ぬ。武田三匍に香椎フォースアウト。

第五回。(二中)津久井三振、山田中前安打に出て投手牽制暴投に三壘に至りしも後甲斐三振、中山バントを失して止む。
(平安)伊藤左中間を抜く快三壘打を放ち中川の中飛犠打に生還、岡村三飛、内海三匍。

第六回。(二中)牧野三匍、志摩二匍、別所三振。
(平安)和田投匍失に生き香椎四球に出で稻田の三匍に和田フォースアウト、伊藤遊匍失、武田四球、伊藤三匍に同兄生還し中川の中飛に止む。

第七回。(二中)丸山左飛、續く前田、津久井三振となる。
(平安)岡村中飛、内海左飛、和田遊匍に凡退。

第八回。(二中)山田先づ左翼左方安打し捕手逸球に三進、甲斐、中山、伊藤に牛耳られ三振し牧野三匍安打し山田生還、志摩三振。
(平安)香椎左上三壘打し稻田の遊匍に危く還り、伊藤二匍、稻田盗壘し武田右翼安打に生還、伊藤の中飛に止む。

第九回。(二中)敵は六點リードせり、別所二匍、丸山、前田の三振に終る、時六時二十三分、伊藤の直球と過失の續出に痛手を受けたり。

 神戸二中 100 000 010=2
 平安中學 002 112 02A=8


 〔二 中〕 打得安犠盗三四過残
             死  
       數點打打壘振球失壘
 6 牧 野 401001031
 7 志 摩 411002010
 83 別 所 400002000
 5 丸 山 401001021
 2 前 田 400003000
 31 津久井 300002010
 98 山 田 312000001
 19 甲 斐 300003010
 4 中 山 300001020
     計 322500150103

 〔平 安〕 打得安犠盗三四過残
             死  
       數點打打壘振球失壘
 59 香 椎 321000210
 6 稻 田 530020000
 1 伊 藤 512010001
 8 武 田 402000104
 7 伊 藤 511000001
 2 中 川 300110011
 9 岡 村 400010001
 3 内 海 310000110
 4 和 田 400000000
     計 3686150438

○對全三菱戰 昭和4年6月15日(土)三菱グラウンド
 前日よりの雨も漸く此の日の朝止み三菱グラウンドも水たまり多く内野、外野共にワイルドにしてバウンドは勿論走るさへ不自由なり、又此の日志摩等の缺席者を見しも強ひて擧行せり。

 神戸二中 000 001 000=1
  全三菱 301 020 01A=7


     打得安犠盗三四残失
     數點打打壘振死壘策
 二 中 2912007455
 三 菱 37711014061

○對神戸税關戰 昭和4年6月18日(火)神戸二中
 本校グラウンドにて五時五分夏の長日と雖も薄明迫り七回戰を約せり。次日に對海草中學戰を控へ一同豫想外エラー多くヒットしぶく前田よく好投して敵を封じ暫く甲斐スランプにより休む。

 神戸二中 000 021 2=5
 神戸税關 000 000 2=2


     打得安犠盗三四盗失
     數點打打壘振死壘策
 二 中 2656103785
 税 關 2824025582

◎對海草中學戰 昭和4年6月19日(水)神戸二中
 對税關戰の調子ならばさして悪戰はないと豫想して居た所決して氣を落したのではないが税關の投手に比して球速の異かバッティングがない。春の遠征に二−一の接戰をなしたチームだ。今夏は覇者廣商に破れたれど優勝戰に至り全國に名をなしたチームである。

第一回。(海草先攻)球審濱崎、壘審栗本氏の下にプレー開始四時二十分。大亦遊匍、神前投匍、續く荒川も投匍にアウト。
(二中)牧野三振、津久井右前安打、志摩三振、別所の中前安打續く丸山の二壘右方を抜く安打に津久井生還、石原の二飛に先づ得點す。

第二回。(海草)濱野遊飛、西山右飛、山脇四球、松本再び四球で出で山脇サードスティールを企て別所の好投にアウト。
(二中)前田遊匍暴投に生き古林四球、中山三振、牧野遊撃上を抜くかと見えしに大塚の好捕に殺され津久井一匍に止る。

第三回。(海草)大塚中飛、鈴木左翼左方の二壘打を出だし大亦の左飛後三盗せしも神前の中飛に入らず。
(二中)志摩四球、別所投匍犠打で送り丸山遊撃を抜く安打せしも二壘をつかんとし刺され石原の遊匍に止む。

第四回。(海草)荒川一壘失に生き濱野中飛安打し西山四球、投手津久井に代り山脇二失後松本の遊匍に死し荒川、濱野得點す。又西山一擧に本壘をつき刺され松本續いて三壘に死す。
(二中)前田三振、古林投匍、中山同じ。

第五回。(海草)大塚四球、鈴木三匍、大亦四球に送られ神前の中前飛球に大塚ホームイン、荒川右飛に前二者得點、濱野四球、西山右翼安打に濱野又入り山脇二壘上をテキサス安打し松本の二匍に止む。
(二中)牧野二匍、津久井遊飛、志摩三振。

第六回。(海草)大塚二匍、鈴木三振、大亦四球、神前二飛。
(二中)別所遊匍、丸山四球に出で石原三振、前田の左翼二壘打に生還、古林三進。

第七回。(海草)荒川先づ中堅越三壘打し濱野四球、西山三振、山脇の右中間二壘打に入り、山脇三壘盗走し松本の二匍に入る、大塚左翼に猛打せしが石原よく取り止む。
(二中)中山四球、牧野三振、中山又二壘に走り死す。津久井遊匍に終る。

第八回。(海草)鈴木三壘邪飛、大亦四球に出で神前中前安打、荒川の中堅犠打、續く濱野の三遊間安打に加點、西山の遊匍に終る。
(二中)志摩中前安打し別所の三匍に二壘に刺され別所又二壘を窺ひ刺され丸山三振。

第九回。(海草)山脇四球、松本中飛、大塚中前安打、鈴木の遊匍に三壘に死し大亦一匍に攻撃終る。
(二中)石原二匍、前田二遊間安打し甲斐ピンチに出でしも三壘邪飛、中山二匍に事止む。投手の安打十本!これは投手力の弱少たる事を明示する次第、浪速迄想ひをねれ。

 海草中學 000 240 310=10
 神戸二中 100 001 000=2


 〔海 草〕 打得安犠盗三四残失
             死  
       數點打打壘振球壘策
 7 大 亦 320010310
 19 神 前 512000010
 4 荒 川 421100000
 5 濱 野 332020211
 91 西 山 401001110
 2 山 脇 312020201
 8 松 本 400010110
 6 大 塚 411000110
 3 鈴 木 501010020
     計 3510101711082

 〔二 中〕 打得安犠盗三四残失
             死  
       數點打打壘振球壘策
 6 牧 野 400002000
 31 津久井 411002001
 8 志 摩 401002110
 2 別 所 301100010
 5 丸 山 312011010
 7 石 原 400001000
 13 前 田 402001030
 9 古 林 200001111
 PH 甲 斐 100000000
 4 中 山 300001101
     計 32271111373

◎對浪速(華)商業戰 昭和4年6月22日(土)
 我軍敗れて止まずダイヤコーチ五試合中三試合に連敗の憂目を見男子の血如何でわき立たん、此の日青空に白雲の飛ぶあり、我がチームは新進前田を重ねてマウンドに送り浪速の覇浪商と戰ふ、黒田氏球審、小野氏壘審に時四時二十七分、西天は白雲中の太陽紅にそめ選手の顔は一段と輝いた如く決心の色が讀めた。

第一回。(浪速=華)馳川二失に生き湯川投手犠打、中島左前安打、西田の中飛失に得點す。酒井中飛、清水二飛。
(二中)牧野二匍、甲斐二匍、志摩三振に凡退。 

第二回。(浪速)中根三失、谷本捕手邪飛後好投に刺し水谷投匍。
(二中)別所遊匍、丸山四球に出でしも前田の遊匍に死し石原三振。

第三回。(浪速)馳川遊撃を抜くかと思はれる直球を打ちしも牧野好捕、湯川遊匍、中島四球後捕手逸球に二盗、西田の三失に送られしも酒井右飛。
(二中)古林遊匍失に生き中山三振、牧野の二匍に二走甲斐の右中間テキサスに一氣生還、志摩一壘飛球。

第四回。(浪速)清水二匍、中根死球後二盗成り松本三飛、水谷の遊匍に入らず。
(二中)別所二失に生き捕手の一壘暴投に三壘に至り續く丸山の右翼右方安打に還り丸山投手暴投に三盗し前田三振、石原の投手犠打に生還、古林投匍に止む。

第五回。(浪速)馳川四球、湯川捕手邪飛、中山同じく西田再び四球に送られ重盗せしが酒井三振。
(二中)中山四球に出で牧野三振、甲斐一匍に重殺さる。

第六回。(浪速)清水遊飛、中根三失に生き續く谷本遊撃の一壘暴投に生きしも清水三盗を企て捕手好投に死す、小谷右飛す。
(二中)志摩三振、別所中飛、丸山四球に前田左中間の快二壘打を放ちしも石原三振す。

第七回。(浪速)馳川右飛、湯川遊飛、中島四球、西田中飛。
(二中)古林二飛、中山遊撃の一壘暴投に二走し牧野快直球せしも捕られ甲斐右越安打後二盗し遊失に中山還り志摩の四球に甲斐還り前田再び二球目を左翼二壘打し志摩、別所生還、石原三振に止む。

第八回。(浪速)この回馳川は投手より右翼に湯川は北浦に西田は右より左へ酒井は荒井に中根は沈に代り沈マウンドに、谷本は松田に、水谷は三より二壘へ、松田三壘へ交替を見る。荒井三匍、清水二失に生きしも沈三振、松田の左飛に止む。
(二中)古林二匍、中山三壘の一壘暴投に生きしも牧野一擧本壘をつきアウト。

第九回。(浪速)小谷先づ遊匍暴投に馳川右翼安打、投手北浦の犠打を一壘へ投ぜしも一壘手逸球し小谷生還、中島の二匍失に馳川、北浦還り西田四球後捕手逸球、荒井四球に出で清水遊飛、沈三振し松田の四球に中島得點し小谷の遊匍に終る。
我軍今年のリーグ第一戰勝で前田の前半の好投と好打に據りアルファー附で終る。