昭和10年(23陽会)1935年

NO1

〈神戸新聞〉
[第3回縣下中等學校優勝野球大會]

 昭和10年4月4日(木)明石公園球場
 午後2時50分開始=5時25分終了 審判・泉谷(球)野村(壘)
 加古川中 000 415 030=13
 神戸二中 231 020 000=8


 〔加古中〕      〔二 中〕
 6 吉 木 37打數30 16 加 島
 9 中 原 13得點8 4 池 田
 5 松本三 10安打4 3 津 田
 1 福 富 0犠打0 167 葛 野
 2 松本文 17四死22 76 葛 西
 8 田 村 0盗壘2 8 田 淵
 3 村 井 12三振8 9 福 本
 7 松 田 14残壘7 5 高 原
 4 多 木 6失策4 2 木 村

〈朝日新聞〉
【第21回全國野球選手権大會兵庫豫選】

 昭和10年7月26日(金)甲子園
 開始午前10時30分=閉戦午後零時32分 審判・望月(球)西川、野村(壘)
▽1回戦
 報徳商業 001 101 120=6
 神戸二中 000 030 000=3


 〔報徳商〕      〔二 中〕
 左 荒 木 31打數34 右 田 淵
 二 森 澤 6安打7 一 津 田
 中 野 口 3犠打1 中 葛 野
 遊  辻  4三振9 投 加 島
 右 上 山 11四死1 捕 木 村
 捕 古武家 6盗壘2 左 吉 田
 投 赤 石 1失策4 遊 池 田
 一 野 本 3二打0 三 高 原
 三  島  0三打1 二 道 下

 △二壘打=辻、荒木、赤石△三壘打=道下

☆逆轉また逆轉 二中つひに敗退 6−3報徳の意氣凄し☆
◇「新興」報徳の意氣衝天(G)……報徳劈頭より元氣よく、第一回四球に出た荒木、森澤の犠打に進み野口死球、辻の二匍でまづ走者二、三壘に出で第二回にも二死後滿壘とするなど空しいながらも元氣に攻撃したが、果然第三回辻二壘打、つづく上山四球に出て重盗成り、古武家の長飛に最初の一點を擧げ、ついで第四回荒木の二壘打でまた一點を増し堅實に二中を押して氣を吐く、二中凡打また凡飛で前半意氣揚がらず。

◇二中奮起して形勢逆轉(G)……第五回に入り二中やうやく左飛失に吉田が生きて氣をよくし、池田の安打、高原の犠打、道下の三壘打、更に田淵の安打と續發し一擧三點形勢逆転、萬場沸く。

◇報徳再び優勢(G)……報徳不利のうちにも二中を押し、第六回二匍失で出た赤石、島の犠打、荒木の左越二壘打に生還、またも同點となり、第七回には赤石の二壘打にまた一點を勝ち越し、逆轉の逆轉、さらに第八回荒木左前安打、森澤遊匍失に出で、野口の投匍に荒木本壘に斃れたが野口の二盗を防がんとして捕手の暴投に一點、つづく野口も上山の二匍に生還し勝利を確保す。

◇二中回復ならず(G)……二中第六回に報徳と同點になってより意氣消沈、僅かに第七回道下、第九回高原と二死後に一安打づづあったのみで6−3の差を破り得ず遂に元氣な報徳に押されて終った。

《武 陽》
[神戸近郊中等リーグ戦]

 昭和10年9月8日(日)神戸市民運動場
 開始午前9時10分=閉戰10時45分 審判・林田(球)大河、有本(壘)
▽リーグ第1戰
 神戸二中 000 000 100=1
 瀧川中學 002 002 00A=4


 〔二 中〕 打得安犠盗三四残
 9 田 淵 30100112
 7 山 本 30100010
 8 葛 野 40000100
 1 加 島 30000010
 3 矢 野 31000111
 6 池 田 40100101
 4 津 田 40100101
 5 高 原 10000021
 2 木 村 30000100
     計 281400666

 〔瀧 中〕 打得安犠盗三四残
 5 森 際 32101021
 6 田 中 31110001
 1 湯 淺 10001033
 8 三 田 30000012
 3  淀  20010111
 9 遠 藤 40000200
 2 坂 井 41100200
 4 伊 東 30010000
 7 高 田 40100000
     計 274432578

 △二壘打=森際、田中、高田

第一回△二中、田淵三振、山本左前直球安打に出たが葛野の遊匍に封殺、葛野二盗に倒る。
   ▲瀧中、森際三匍、田中遊匍、湯淺四球、三田三匍失に續き投手の二壘牽制悪球に走者二、三進し、淀四球に出たが遠藤三振。

第二回△二中、加島、矢野共に遊匍、池田遊飛。
   ▲瀧中、坂井右飛、伊東遊匍、高田二匍。

第三回△二中、津田一匍、高原四球、木村の三匍に高原二壘に封殺、木村は田淵の右中間安打に一舉三壘を突き右翼手よりの送球に刺さる。
   ▲瀧中、森際左越二壘打、田中の三前バント、投手一壘に高投して森際生還、田中三進、湯淺四球二盗の時、遊撃手よりの返球木村落して重盗成り田中生還、三田も四球、淀の投手バントに走者進んだが遠藤、酒井共に三振す。

第四回△二中、山本四球、葛野三振後山本二盗に死す、加島投匍。
   ▲瀧中、伊東三匍、高田左翼右に二壘打、森際四球、田中遊飛、湯淺右飛。

第五回△二中、矢野、池田、津田三者三振。
   ▲瀧中、三田二飛、淀遊飛、遠藤遊匍。

第六回△二中、高原三飛、木村三振、田淵四球、山本三飛。
   ▲瀧中、坂井三壘頭上を抜く安打、伊東の投前犠打に送られ高田の遊匍に三壘に進み、森際四球二盗後田中の左越二壘打に二者生還、湯淺四球、三田中堅直球。

第七回△二中、葛野投匍、加島四球に出、矢野の投匍に封殺されたが池田の遊撃左を抜く安打に二進し、津田の左前強襲安打に一舉生還、池田二進、高原四球で二死ながら滿壘となったが木村遊飛。
   ▲瀧中、淀三振、遠藤中飛、坂井三振。

第八回△二中、田淵中直、山本左飛、高野二匍。
   ▲瀧中、伊東遊匍、高田二飛、森際捕邪飛。

第九回△二中、加島投匍、矢野死球に出たが池田三飛、津田遊匍に終り結局四A−一で惜敗す。試合時間一時間三十五分。

〔後記〕スケジュールでは一番最後に當ってゐた瀧中が降續く雨のため新チームとして初の試合をやらねばならなかった事は相手が今育英に次ぐ強剛であるため、二中に取っては多大の不利であった。
 瀧中は僅かに二壘と左翼を失ったのみ、二中も亦吉田、道下、福島の三人を送出したと云へ矢野と山本の返り咲きに跡を埋め兩軍堂々の陣を張った。

 加島投手はオーバーハンドの直球とアウトドロップ、アンダースローの直球とカーヴの四種類の球筋を巧にミックスしてやゝコントロールに難色があったが彼としては上々の部で夏よりも多大の進歩がうかがはれた。敵に許した安打四本中二壘打三本、之は皆野手のスタートさへ好ければ取れるものであった。

 たゞ彼自身三回の一壘への高投さへなくば四點も敵に與へなかったであらう。特に彼のアンダースローの低目めの直球とカーヴとは瀧中の古豪連を散々悩ました。オーバーハンド流行の今日、嘉義農林の東投手が今夏松山、平安の打棒を牛耳ったのもこのアンダースローの平凡な球であった事を思へば今後の彼の投球振が如何に相手の打撃をおさへるか注目すべき事である。

 他方二中の打陣を見るとそこに心細きが多分にある。湯淺投手のカーヴ好調なりとは云へ、あまりにも貧しかった。三、四、五番の重要連に今一息の猛々しさが願はれる。而し新チームの試合の一戦として強剛瀧中に喰下り互角の試合を演じた事は今後チームの将來に大いなる自信を與へた事と思はれる。

▽リーグ第2戰
 昭和10年9月12日(木)神戸二中
 開始午後2時15分=閉戰4時30分 試合時間=2時間15分
 審判・林田(球)吉田、能勢(壘)
 村野工業 000 000 000=0
 神戸二中 200 116 20A=12


 〔村 工〕 安打得犠盗三四残
 61 花 木 14000113
 98 横 田 03000211
 26 神 澤 13002013
 17 村 津  14001001
 5 本 林 04000201
 713 高 梨 04000100
 32 竹 内 02000120
 4 中 田 03000111
 8 山 下 01000100
 89  某   03000200
     計 33100311610

 〔二 中〕 安打得犠盗三四残
 9 田 淵 12300032
 7 山 本 44201012
 8 葛 野 24201011
 1 加 島 35100002
 3 矢 野 04101110
 6 池 田 05000400
 4 津 田 05000100
 5 高 原 02200020
 2 木 村 04100100
     計 10351203787

 △二壘打=田淵、葛野 △逸球=神澤 △野選=中田

第一回▲村工、花木、横田三振、神澤左前安打に出て二盗、村津の二壘手右を抜く安打に三進、村津も二盗したが本林三振。
   △二中、田淵、山本、高野の三者四球、加島の二越安打に田淵、山本生還、其の間葛野三進、加島二進、矢野三匍、池田三振、津田三匍、然し二點を先取す。

第二回▲村工、高梨左飛、竹内四球に出たが二盗に死し中田三振。
   △二中、高原四球、木村三振後、田淵も四球、山本も中堅右を大きく抜いたが高原の鈍走8−6−2のリレーでホームに憤死、田淵三進、山本二進、葛野二直。

第三回▲村工、山下三振、花木ボークで二進、横田二飛後神澤の遊匍一壘失に三進し神澤二盗したが村津中飛。
   △二中、加島二飛、矢野遊飛、池田三振。

第四回▲村工、本林投匍、高梨左直、竹内三匍。
   △二中、津田三振、高原四球、木村二飛、田淵四球で高原二進、山本中堅安打で高原生還、山本は二壘を望んで刺さる。

第五回▲村工、中田四球、PH某の二匍で二進、花木の三匍で中田二壘を出過ぎて刺さる、横田三振。
   △二中、葛野左越二壘打、加島の右中間安打に生還、矢野三振、池田三振、津田二匍。

第六回▲村工、神澤四球、村津の投匍で二進、本林三振、高梨中飛。
   △二中、高原三匍、一壘悪投で生き木村の二匍で二進、田淵の右翼二壘打に生還、山本三遊間安打して田淵三進、山本二盗、葛野の三遊間安打に田淵、山本還り葛野二盗、加島の左中間安打に葛野生還、捕逸に加島二進、更に投手暴投に三進、矢野四球二盗(村工村津左翼、高梨投手となる)池田三匍で加島還り、更に投手の暴投で矢野も生還、津田三匍に終ったが一舉六點を加ふ。

第七回▲村工、竹内四球に出たが中田の中堅安打にスタート悪く二壘に封殺、某三振、花木中前安打、横田四球に滿壘となったが神澤2−2後三邪飛。
   △二中(村工花木投手、神澤遊撃、高梨一壘、竹内捕手となる)高原中飛失(村工中堅、右翼交代)木村の遊匍で二封、田淵二匍野選、投手暴投で走者進壘、山本四本目の安打を左翼左に放って木村、田淵生還、山本は二進、葛野の遊匍で三壘に進んだが加島中飛。

第八回▲村工、村津三匍、本林三匍失、高梨、竹内共に三振。
   △二中、矢野遊匍、池田三振、津田二飛。

第九回▲村工、中田左飛、某三振、花木三匍。

〔後記〕バッテリーを除いては殆ど水準に達してをらぬ村工のチームを相手としては二中の打棒は遺憾なく發揮された。加島は上出來とは言へないが安打三本無得點の記録は危な氣がなかった。村津投手はコントロールとカーヴがその武器で有ったが體躯に恵まれてゐながらコントロールに缺け、バックの凡失が加って壊滅した。

 二中の得た安打十本その中九本迄は山本、葛野、加島の三人で稼いでゐる。下位打者の今一息の奮闘が望ましい。實力には決してかほどの大差があったわけではなく、氣力の相異が大いにあづかってかくなったのであらう。

 何にしてもホームグラウンドで十點以上の大差を付け相手にスコンクを喰はしたのは三、四年前の佐久間、成川等の強勢時代にもあまり類を見なかっただけに爽快な氣分がする。