昭和7年(20陽会)1932年

NO1

《武 陽》
☆對第一神港戰
 8A−7 勝 二中運動場 審判・高田、平田
 一月下旬本年最初の試合を第一神港と行ふ。敵は岸本、高島等を送って往年のおもかげ無く、我軍は田中柳、野田、成川の三投手交々プレートに立ち、十回の補回戰の後、松村の巧走、成川のタイムリーヒット功を奏して武陽原頭夕闇せまる中に凱歌を擧げた。

☆對灘中學戰 11−0 勝 灘中學 審判・筒井、灘中生
 二月中旬我等は新進灘中と戰ひ、鎧觸一蹴11一0にて大勝す、此日霧甚だ濃く阪神沿線奇景を呈す。

☆對神戸商業 第一回戰 5A−3で二中勝つ
 昭和7年1月29日(金)神戸二中 午後2時開始 審判・筒井(球)濱崎(壘)
 ▽バッテリー 二中=野田−成川、佐久間  神商=竹本−若林

☆對神戸商業 第二回戰
 昭和7年2月6日(土)神戸二中 午後2時開始 審判・筒井(球)神商生(壘)
 神戸二中 102 100 203=9
 神戸商業 000 000 000=0


 〔二 中〕     〔神 商〕
 6 成 川     6 井 上
 8 野 田     7 新 名
 2 佐久間     31 竹 本
 1 田中柳     2 若 林
 5 池 田     4 中 山
 7 田 井     8 山 田
 4 松 村     13  南 
 9 井 貝     5 前 川
 3 田中敏     9 石 原
 打得安犠盗三四失  打得安犠盗三四失
 數點打打壘振球策  數點打打壘振球策
 389825722  2802001377
 △三壘打=佐久間2、野田△残壘=二中4、神商7

☆對丸龜中學戰
 昭和7年3月22日(火)神戸二中 午後3時開始=5時10分閉戰 審判・山本、阪本
 丸龜中學 000 000 001=1
 神戸二中 300 000 00A=3


  〔丸 龜〕     〔二 中〕
 5 米 本     6 成 川
 14 三 木     8 野 田
 6 白 川     2 佐久間
 491 木 原     1 田中柳
 8 片 岡     5 池 田
 2 葛 上     3 名 倉
 7 石 井     4 松 村
 9 竹 林     7 田 井
 3 光 田     9 田中敏
 打得安犠盗三四失  打得安犠盗三四失
 數點打打壘振球策  數點打打壘振球策
 2812001048  313722331
 △二壘打=井岡△本壘打=田中柳△残壘=二中?、丸龜8
 △併殺=白川−光田、成川−松村−田中

敵は四國の強剛にして、寶塚の大會に覇を唱へたるもの、然し田中の好投よく丸龜中の打撃を封じて、三A對一の接戰にて勝ち益々春の大會に於ける自信を強める。

☆對村野工業戰
 昭和7年3月30日(水)神戸二中 午後1時開始 審判・山本(球)村工生
 村野工業 000 000 0=0
 神戸二中 500 360 A=14


 〔村 工〕     〔二 中〕
 4 前 田     6 成 川
 15 河 合     81 野 田
 21 吉 田     2 佐久間
 6 増 田     18 田中柳
 8 重 松     5 池 田
 7 山 本     3 名 倉
 3 森 口     4 松 村
 9  原      7 梶 井
 51 森 本     9 田中敏
 打得安犠盗三四失  打得安犠盗三四失
 數點打打壘振球策  數點打打壘振球策
 2102111036  31141017071
 △二壘打=成川△野選=河合、成川△残壘=二中7、村工4△併殺=前田−森口

《武 陽》
[第一回兵庫縣中等學校野球大會]

 京阪神中等學校對抗野球大會改め第一回兵庫縣中等學校野球大會は春爛漫たる四月一日より濱ノ宮球場で開始された。此の大會より今春新に規定された文部省の統制案によって行はれるのである。

 之は學生野球の浄化と、ジャーナリズムの専横を防止する為に作られたもので善悪如何なる結果をもたらすか知らないが日本のベースボール界に大いなる波紋を巻起しつゝある。何はともあれ、濱ノ宮球場いずれも乾坤一擲の争覇に見るもの、見らるゝもの共に陶酔の頂點に立つ!

第一回戰 不戰一勝
第二回戰 對姫路師範

四月四日午後三時より、釜政(球)泉谷(壘)二氏審判の下に姫師先攻で開始、此の日天氣晴朗にして、夏の日を思はせる。
▽2回戰
 姫路師範 141 002 100=8
 神戸二中 310 000 41A=9


 姫師は昨年の此の大會の劈頭に顔を合わせ、思はぬ不覺を取った敵であるので、今年は用心してかゝったが、相變らず、粘りの強い攻撃にあって苦戰した。
 姫師は第一回、無為の後其の裏二中一安打、二四球、四敵失に三點を得れば二回表姫師田中敏の守備拙きに乗じ、右翼線上に連續長打して得點、フィルダーチョイス等加って四點を得一點をリードすれば、其裏二中成川の安打に一點をかへし、同點となりたかと思へば三回、姫師連續三安打に又もや一點をリードし、以後四、五回、兩軍得點無く、六回、姫師志水の右飛を松島目測を誤って本壘打となし、二者ホームイン、

 七回尚四球の連失に一點を加へたる時は又敗けたるかと思はせたが七回の裏に到り、池田の二壘打及敵投手四球の連發に四點をかへして同點となり、八回には、成川が池田のタイムリー安打に還り、一點を三度リードし、以後姫師點なくシーソーゲームをつゞけた後に我軍捷つ。

 今日の功勞者は三度ヒットを放ちて、三度無死一壘に生きた成川と、二本の長打、一本の單打を打った池田とで就中池田の七、八回に於ける安打は共にタイムリーなもので、最も光り輝くものであった。さりながら田中、野田二投手の不出来はどうした事であろうか。

〈神戸新聞〉
[兵庫縣公認 兵庫縣中等學校野球大會]

 ◇昭和7年4月1日、文部省の野球統制令が實施され従來の
 [京阪神中等學校對抗野球大會]は[兵庫県中等學校野球大會]に。

昭和7年4月4日(火)濱ノ宮球場
午後2時52分=5時20分 審判・金政(球)泉谷(壘)
▽2回戰
 姫路師範 041 002 100=8
 神戸二中 310 000 41X=9


 〔姫 師〕 打得安犠盗三四残失
       數點打打壘振球壘策
 81 上 田 200000310
 2 河 野 310001222
 6 白 岡 501002011
 5 志 水 511012011
 18 草 野 321000201
 9 難 波 422002100
 7 松 尾 312020220
 4 大 塚 511002000
 3 三 木 300011221
     計 338804101296

 〔二 中〕 打得安犠盗三四残失
       數點打打壘振球壘策
 6 成 川 533020011
 891 野 田 410021100
 2 佐久間 220101200
 18 田中柳 411000100
 5 池 田 413001111
 3 名 倉 200002221
 7 梶 井 300001010
 4 松 村 110010210
 9 田中敏 000000000
 89 松 島 200002000
 8 井 貝 200001000
     計 2997159963

△本壘打=志水 △三壘打=大塚、松尾 △二壘打=難波2、池田2 
△ボーク=田中1 △試合時間=2時間28分

第一回(姫師)上田無死四球を選んだが三者三振。
(二中)成川いきなり遊三間安打、野田の犠打に二進、佐久間、池田は共に四球を利したがその後に安打なく敵失のみで三點を先取。

第二回(姫師)粘って追撃に入る。即ち無死、草野四球を得た後難波、松尾、大塚いづれも右線上を掠めて見事に三壘打を連續飛ばして忽ち四點を報じ一點を勝越す。(二中)四球を利した松村、松島三振後二盗し成川の二壘横安打に長驅生還同點となる。

第三回(姫師)尚攻撃鋭く草野遊側安打、難波、松尾又も中堅右に安打を集中して一點を収め、難波本壘を覗うて三、本間に挟まれて徒死したが二點をリードす。
(二中)三者凡退。

第四回(姫師)(野田投手に、田中柳中堅)野田頻りにカーブに攻め立て姫師の健棒を抑へ二死後志水三匍悪投に二進したのみ。
(二中)梶井三振、松村四球を利したが松島三振後二盗を企てゝ刺さる。

第五回。兩軍無為に漸く試合は平調に入る。
第六回(姫師)上田四球を得たが捕手の牽制に倒れた後、河野又四球、白岡一匍後、志水の右翼越大飛球本壘打となり又二點を加ふ。
(二中)一死後池田左中間三壘打に出、名倉四球に走者一、二壘のチャンスに恵まれたが梶井の遊匍に池田三壘に封殺され松村一飛に遂に得點なし。

第七回(姫師)難波、松尾共に四球、大塚、三木は三振に二死となったが上田遊匍失に滿壘となり、河野粘って四球を選び難波押出されて一點を拾ふ。好望であったが白岡三匍。
(二中)二死後この回も亦無為かと思はれたが佐久間の四球により俄然二中に好機來たり田中柳、池田(二壘打)の二本の安打とにより一點を報じた後直線的四球四個により計四點を酬いて同點となる。

第八回(姫師)一死後草野四球に出壘したが難波三振して倒る。
(二中)成川遊三間安打、野田四球に再びチャンスを迎へ(上田投手、草野中堅)佐久間の四球に滿壘となって、池田二−三後遊三間に安打し成川生還、野田左翼手の返球の隙に乗じ本壘へディレードスティールを試みて惜しくも刺され三進した佐久間も亦池田の二盗に呼應して本壘を衝きアウト、しかし一點を勝越す。

第九回(姫師)三者凡退して遂に追撃成らずして九A對八にて敗る。