巻頭文−6

NO6

               創部100周年に寄せて

 

 

 

            神戸新聞社代表取締役社長
                   橋田 光雄

 
兵庫県立兵庫高校野球部が創部100周年の大きな節目を迎え、記念の野球部史が発刊されましたことを心からお喜び申し上げます。「十年一昔」と言いますが、その10倍の一世紀にわたって刻まれた年輪に、畏敬の念を覚えます。 

 兵庫県には高校球児のあこがれの舞台、甲子園球場があります。今年で第90回の記念大会を迎える夏の全国高校野球選手権大会を、1915(大正4)年の第1回大会から一貫して一県単独で開催してきたのも、全国47都道府県の中で兵庫だけです。「野球王国」と呼ばれる所以でしょう。地元紙としての私達の高校野球取材は、報道にも自然と力が入ります。 

 兵庫高校の前身の神戸二中はその第1回兵庫大会の優勝校として、さらに第1回全国大会の出場校として球史に名を残しています。戦前の中等学校球界をリードした輝かしい伝統は、野球とともに青春時代を歩んだOBの方々の誇りであり、現役部員の励みと存じます。 

 春の選抜大会にも、1948(昭和23)年を皮切りに4回の出場を果たしています。戦前、戦後を通じての活躍は代々、先輩から後輩へとしっかりと引き継がれてきた良き「部風」のたまものと推察します。選抜大会の敗戦時のスコアは、4回のうち3回までがくしくも2−3という1点差の惜敗。最後まであきらめず懸命に戦い抜く、粘り強いチームカラーを見る思いです。 

 大正初期の旧制中学時代に始まった神戸高校との野球定期戦は「神戸の早慶戦」と称された時期があったと聞きます。今もプレーボールとともにブラスバンドの演奏が鳴り響くスタンドは、全校応援で沸き立っています。

 第二次世界大戦による3年間の中断、さらに1995年の阪神・淡路大震災による中止を乗り越え、90年余りの歴史を刻んできた対抗戦は兵庫県が誇る素晴らしいスポーツ文化です。
 

 最後になりましたが、未来に続く新しい100年に向け、力強い第一歩を踏み出した兵庫高校野球部のますますの発展をお祈り申し上げます。
 

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